交流回路を学ぼう

電気回路 第5章 ── アニメーションとインタラクティブな体験で、 ゼロから交流回路を完全マスター。

§1 交流とは
波形・周波数・実効値
🔄
§2 ベクトル
位相差・フェーザ表示
⚙️
§3 R・L・C回路
抵抗・コイル・コンデンサ
🔗
§4 直列・並列
インピーダンス・共振
§5 電力
有効・無効・力率
🔬
シミュレータ
RLC回路を自由に操作

この教材の使い方

1
§1〜§5 を順番に読む
各セクションにアニメーションとスライダーがあります。動かして直感的に理解しましょう。
2
「練習問題」でチェック
全30問。正答後に解説が表示されます。
3
「シミュレータ」で自由実験
R・L・C の値を変えてインピーダンスや位相がどう変わるか確かめましょう。
第1節

交流の発生と表し方

電池(直流)と違い、交流は電流の大きさと向きが時間とともに変わります。
家庭のコンセントも交流です。ここでは「交流とは何か」を基礎から学びます。

1. 直流と交流の違い

直流(DC)

電流は常に同じ向き・同じ大きさで流れる。

例:電池、USB充電器

➡ 波形はまっすぐな水平線

交流(AC)

電流の大きさと向きが周期的に変化する。

例:コンセント(50Hz または 60Hz)

➡ 波形は「サインカーブ(正弦波)」

2. 正弦波交流のアニメーション

コイルを磁界の中で回転させると、e = Em sin θ という正弦波の起電力が発生します。

実効値 E
平均値 Eav
周期 T

3. 周波数・周期

周波数 f [Hz]:1秒間に波形が繰り返される回数。

周期 T [s]:波形が一つできる時間(1回の繰り返し時間)。

T = 1 / f     f = 1 / T
💡 日本では電力会社によって周波数が異なります。
・東日本(東京電力管内):50 Hz(T = 20 ms)
・西日本(中部・関西〜):60 Hz(T ≒ 16.7 ms)

4. 角周波数(角速度)

コイルは1秒間に f 回転します。1回転 = 2π rad なので:

ω = 2π f  [rad/s]

ωを角周波数といいます。これを使うと起電力の式は:

e = Em sin(ωt + φ)  [V]

φは初位相(t=0 のときの位相角)です。

5. 瞬時値・最大値・平均値・実効値

名前記号意味計算式
瞬時値e, iある瞬間の値e = Em sinωt
最大値Em, Im波形の頂点の値
平均値Eav半周期の平均Eav = (2/π)Em ≒ 0.637 Em
実効値E, I直流と同じ仕事をする値E = Em/√2 ≒ 0.707 Em
✅ 「100V コンセント」の 100V は実効値。最大値は 100×√2 ≒ 141V。
E = Em / √2  ≒  0.707 × Em

📝 確認問題

実効値が 200V のとき、最大値はいくつか?

答えを見る
Em = √2 × E = 1.414 × 200 ≒ 283 V
第2節 前半

位相差とベクトル(フェーザ)

交流では大きさだけでなく「位相(タイミング)」も重要です。
ベクトル(フェーザ)を使うと、計算が簡単になります。

1. 位相差とは

同じ周波数の2つの交流が「どれだけタイミングがずれているか」が位相差です。

e₁ = Em1 sin(ωt)  ,  e₂ = Em2 sin(ωt + θ)

e₂ は e₁ より θ [rad] だけ位相が進んでいるといいます。

⚠️ 位相差は同じ周波数の波でのみ比較できます。

2. 回転ベクトル(フェーザ)アニメーション

角速度ωで回転する矢印(ベクトル)のY成分が、交流の瞬時値を表します。

3. ベクトルの座標表示

直交座標表示

ベクトルの終点を (a, b) で表す。

Ȧ = a + jb

a:実部(横軸成分)
b:虚部(縦軸成分)

極座標表示

大きさ A と角度 θ で表す。

Ȧ = A∠θ

A = √(a²+b²)
θ = arctan(b/a)

💡 j は虚数単位(j² = -1)。電気では i が電流と混同するため j を使います。

4. ベクトルの足し算

2つのベクトルの合成は、各成分を足し合わせます。

Ċ = Ȧ + Ḃ  →  (a₁+a₂) + j(b₁+b₂)

大きさ C は:

C = √( (A cosθ₁ + B cosθ₂)² + (A sinθ₁ + B sinθ₂)² )
第2節 中盤

R・L・C それぞれの交流回路

抵抗(R)・コイル(L)・コンデンサ(C)を単独で交流電源につないだとき、 電流と電圧はどんな関係になるでしょうか?

1. 抵抗 R だけの回路

抵抗だけの回路では、電流と電圧は同位相(ズレなし)。

i = (Em/R) sinωt  [A]

電流の実効値:

I = V / R  [A]
✅ オームの法則がそのまま使える。位相差 θ = 0°

2. コイル L だけの回路(誘導性リアクタンス)

コイルには誘導性リアクタンス XL という「交流の抵抗のようなもの」があります。

XL = ωL = 2πfL  [Ω]

コイルの回路では電流は電圧より π/2 rad(90°)遅れる

I = V / XL  [A]
⚠️ 周波数が高くなるほど XL が大きくなり → 電流が流れにくくなる
XL = 2π × f × L

3. コンデンサ C だけの回路(容量性リアクタンス)

コンデンサには容量性リアクタンス XC があります。

XC = 1 / (ωC) = 1 / (2πfC)  [Ω]

コンデンサの回路では電流は電圧より π/2 rad(90°)進む

I = V / XC = VωC  [A]
✅ 周波数が高くなるほど XC が小さくなり → 電流が流れやすくなる
XC = 1/(2π × f × C)

まとめ表

素子リアクタンス / 抵抗電流と電圧の位相差特徴
抵抗 R R [Ω](周波数に無関係) 0(同位相) 熱に変換
コイル L XL = ωL(周波数が高い → 大) 電流が 90° 遅れ エネルギー蓄積・放出
コンデンサ C XC = 1/ωC(周波数が高い → 小) 電流が 90° 進み 電荷蓄積・放出
第2節 後半

直列・並列回路とインピーダンス

R・L・C を組み合わせた回路を考えます。インピーダンス Z は「交流における総合的な抵抗」です。

1. RL 直列回路

抵抗RとコイルLを直列に接続した回路。電流を基準(i = I sinωt)に考えます。

VR = RI,  VL = XLI
V = √(VR² + VL²)  [V]
Z = √(R² + XL²) = √(R² + (ωL)²)  [Ω]

インピーダンス角(電圧と電流の位相差):

θ = arctan(XL / R)  [rad]
「電流が電圧より θ だけ遅れる」(遅れ電流)

2. RC 直列回路

Z = √(R² + XC²) = √(R² + (1/ωC)²)  [Ω]
θ = arctan(XC / R)  [rad]
「電流が電圧より θ だけ進む」(進み電流)

3. RLC 直列回路

3つすべてを直列接続。XL と XC は互いに打ち消しあいます。

V = √(VR² + (VL − VC)²)
Z = √(R² + (XL − XC)²)  [Ω]
θ = arctan((XL − XC) / R)

共振(直列共振)

XL = XC のとき → (VL−VC) = 0 → Z = R(最小)

f₀ = 1 / (2π√(LC))  [Hz]
✅ 共振時:電流が最大になる。ラジオのチューニングもこの原理!

4. 並列回路

並列回路では各素子に同じ電圧がかかります。電圧を基準に考えます。

回路合成電流の大きさインピーダンス Z
RL 並列I = √(IR² + IL²)Z = V/I
RC 並列I = √(IR² + IC²)Z = V/I
RLC 並列I = √(IR² + (IC−IL)²)Z = V/I
💡 並列共振(f₀ = 1/(2π√LC))では電流が最小になります。

5. インタラクティブ:RLC 直列インピーダンス計算機

XL
XC
Z
位相角 θ
共振周波数 f₀
第3節

交流回路の電力

交流回路の電力は直流と異なり、電圧と電流の位相差が影響します。

1. 瞬時電力

ある瞬間に消費される電力:

p = vi = √2 V sinωt · √2 I sin(ωt−θ)
p = VI cosθ − VI cos(2ωt−θ)

第1項は一定値(有効電力)、第2項は時間的に変動する成分です。

2. 有効電力・皮相電力・無効電力

有効電力 P [W]

実際に消費(熱など)される電力。

P = VI cosθ

皮相電力 S [V·A]

見かけの電力(電圧×電流)。

S = VI

無効電力 Q [var]

コイル・コンデンサで蓄放されるだけの電力。

Q = VI sinθ
💡 三者の関係:  S² = P² + Q²

3. 力率(Power Factor)

力率 cosθ = P / S = R / Z

力率は0〜1の値を持ちます。

  • cosθ = 1(θ=0°):R だけの回路。すべて有効電力。
  • cosθ = 0(θ=90°):L か C だけの回路。すべて無効電力。
  • 0 < cosθ < 1:一般的なRLC回路。
⚠️ 力率が低いと、同じ有効電力を得るためにより大きな電流が必要になります(送電ロスが増える)。

4. 電力三角形アニメーション

皮相電力 S
有効電力 P
無効電力 Q
力率 cosθ
練習問題

🎯 練習問題

全 15 問。各問の選択肢をクリックして答えてください。

自由実験

🔬 RLC 回路シミュレータ

R・L・C と周波数を自由に変更して、波形・フェーザ・インピーダンスをリアルタイムで観察しましょう。

Z [Ω]
θ [°]
I [A]
f₀ [Hz]
XL [Ω]
XC [Ω]
P [W]
力率